夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・涙・・・出るじゃん」
「・・・・」
「貯蓄分はなくなったんじゃなかったの?」
「・・・涙腺が馬鹿になってるんですよ」
「フフッ・・・酷い泣き顔」
「・・・・・残像にしてさしあげましょうか?」
言葉だけじゃ飽き足らず噴き出していわれた一言に瞬時に首に指を巻きつけ、殺意の表示を返して睨んだ。
きっと般若の形相なのだと予測される自分を、彼が怯むでもなくクスクスと笑うと頬に唇を押し当てる。
まるでご機嫌を取るかのように、愛でるようにその感触が軽く食みながら耳元まで移行して。
そして耳に直接吹き込まれる。
「・・・・・泣き顔可愛い」
「・・・・都合のいい、」
「都合良しで逞しく生きてますとも」
「・・・・・都合良しで・・・いいです」
屈託のない笑みでニッと白い歯を見せ笑う彼に脱力し、肩に頭を預けると自分の口の端も小さく上げた。
もう、それでいい。
都合良しで、ここまで持ち直して今があるなら・・・・充分です。
本当に、
「・・・・・・今、あなたの妻である奇跡に幸せ感じました」
「・・・・・戦争・・終幕?」
「・・・・どうでしょうね?・・・・一時休戦?・・・・・何しろ私とあなたですから、またいつこうやって揉めるか分かりませんよ?」
「確かに・・・・俺と千麻ちゃんほど日常会話が皮肉の塊な夫婦はいないからね」
「私から皮肉を取り上げたら夫婦漫才が成り立たなくなりますが?」
「それは困る・・・」
「・・・・」
「俺、あの瞬間に結構愛情感じちゃってるもん」
真顔で困ると宣言した彼がすぐに間の抜けた返答響かせ子供のようにクシャリと笑って。
その額を軽く指の腹で叩くと小さく噴き出しほんの軽く唇を重ねた。
触れてすぐ離れたのにすぐに追ってきて触れ返した彼の唇。
思わず触れた瞬間に噴き出して、そんな私に彼も小さく噴き出しグダグダ。
ああ、でも・・・・。
こんな一瞬すら複数の選択やそれによっての奇跡で成り立っている。
そしてこの記憶もまたいつかに繋がる事になるのよね?
尊い一瞬。
それこそ・・・理想の夫婦の行く末を迎えた時に振り返る為の一瞬。
その時は・・・こんな事もあったと酒の肴に語るのでしょうね。