夫婦ですが何か?Ⅱ
受け取ったそれを脇に挟んで、気を抜けば揺れそうな頭を片手で押さえた。
「・・・・鳴ってますが」
「えっ?・・・ああ、気がつかなかった・・・」
「大丈夫ですか?一体何℃でしたか?」
「・・・・40℃」
「はっ!?」
「・・・・の、-1℃」
「それでも39℃あるんですね?病院行きましょう、」
「・・・無理・・・動く元気ないもん。大丈夫薬飲んで寝てるから、」
死にはしない。と根拠のないセリフと力のない笑みで薬を手にして開封していく。
そんな俺に色々と物申したいらしい彼女の不満の表情を横目に、カプセル式の錠剤を2つ口に含むと水で流しこんだ。
これで大丈夫だと安易に微笑むと限界。
ばさりとベッドに倒れ込んで、寒気を誤魔化すように身を丸めた。
そんな俺を無言で見つめ、重苦しい溜め息だけで感情を押さえた彼女がゆっくりと立ち上がる。
「・・・・千麻ちゃん、」
「・・・何ですか?」
「・・・・・・・・・何でもない」
思わず引き止めたくせにその理由は口に出来ず。
疑問な表情を俺に見せつつもゆっくりと部屋を後にしていく姿に切なくなる。
『傍にいて・・・・』
そんな一言を言いたくて、
言えなくて。
もどかしい感情や倦怠感にきつく目蓋を閉じ無理矢理にも意識に終幕を与えようと躍起になる。
薬の効果もあってか順調に微睡んでいく意識、でもその分強く感じる熱と悪寒。
頭は熱いのに体が・・・寒い。
何か欲しい。
何か、何か・・・体の中から温まるような。
何か・・・・。
渇望する感覚に不意にまた何かの感覚がフラッシュバックして、さっきは掴みそこなった記憶の端を今度は指先で触れる事が出来た。
瞬時に鮮明に浮かんだのは味覚の記憶。
そうだ・・・そうだった、
思いだした。
記憶した味やそれが作用した感覚を思いだせば異常にそれを渇望して、求めて彼女の名を呼ぼうとするのに皮肉にもさっきの自分の努力。
薬の効果も今程憎らしいと思ったことが無い。
抵抗むなしくゆっくりと目蓋がおりて意識が途切れた。
ねぇ、・・・・あの味が恋しい。
千麻ちゃん・・・。