夫婦ですが何か?Ⅱ
多分悪意の無い一言。
彼女の中ではつじつまが合った答えだったのだろう。
それでもまったくその意図が伝わっていないこちらは困惑が強まる一方で、これ以上どう突っ込んでいいものか心の中で頭を抱えてしまう。
そんな間も複雑なこちらの心中なんて存ぜぬな姿はぼんやりと雲の流れを追っていて、とことんマイペースな人だと痛感した。
相変わらず綺麗だけども。
そんな感想を持ったのは私だけではなかったらしい。
「わぁ・・・・すっごい綺麗・・・」
そんな感嘆の響きを口にしたのは若干存在を忘れかけていた拓篤で。
その目が恍惚としているところから予想するのは、彼女が何かのキャラに似ているとかそんなところだろうという事。
確かに非現実的に綺麗だけども私達より2つも上なのよ!とは・・・夢を壊しそうだから言わないでおいてあげよう。
そんな小さな気遣いをして沈黙を保つと、拓篤の声に視線を雲からこちらに移した彼女。
その視線が探るように拓篤を見つめて首を傾げる。
「・・・・・・・・オタク?」
ストレート・・・・。
客観的に捉えた感想をさらりと口にした彼女に、拓篤と言えばハハッ、と苦笑いで声を響かせて。
「あっ・・・はい、・・・そんな括りです」
「・・・・・・何で同じ箱何個も持ってるの?」
「保管、愛玩、など用途別な為です」
「へぇ・・・・気持ち悪いね」
「よく言われます、」
私だけだろうか?
この会話、セリフと表情が見合っていないと感じるのは。
淡々と無感情で思ったままを口にしているに過ぎないらしい彼女と、明らかに響きとしては辛辣な言葉を投げられているのにへラッと流して肯定する拓篤。
彼女にしてみれば悪意はないのかもしれない。
そしてそれは拓篤寄りの感覚から感じた物かもしれない。
僅かにも自分の感情を掠めた一言。
「悪意がないにしても他人の趣味を貶すのはどうでしょうか?」
突発的に零してしまった言葉に彼女の視線が静かにこちらに移り、逆に驚いたように私を振り返ったのは拓篤。
「ち、千麻?僕別にきにしてないよぉ?言われ慣れてるし・・・むしろその感覚のが一般的だと思うし」
「あなたもSANCTUARYの事を貶されたらやはりいい気持ちはしないでしょう?紅さん」
拓篤の言葉を耳にしながらも流して、追い打ちをかけるように彼女に向けた応用の言葉。
その一言に彼女の瞳孔が動いた気がする。