夫婦ですが何か?Ⅱ
「千麻ちゃんっ!」
「っ・・・はい、」
「・・・・・・・・あの、大丈夫?」
「・・・・【大】がつくほどではないですが・・・丈夫です」
だいぶダメージは大きいけれど。
蓄積された不穏な感情を緩和させるように深い息を吐くと片手で頭を抱えて下を向く。
そんな私に再びその目を動揺に揺らしながら彼が覗き込んできて。
「その・・・紅ちゃんには帰ってもらうから。・・・ホテルか何か用意してさ・・・」
「・・・・・・・いいです。この家にも客間はあるんですから」
彼の私を優先させた気遣いの言葉に、チラリと視線を先に移してから反論を返して。
その言葉を予想していなかったらしい彼があからさまに驚愕を示して私を見つめる。
本気?
そんな問いに感じる視線にまっすぐ対峙して絡めていく。
「・・・過去の話でしょう?今は・・・私が妻ですから」
「千麻ちゃん・・・」
「っ・・・それに・・・、こんな【家族会議】とか称して陰でこそこそ会話した後に『ごめん~、ホテルとるからそっち泊まって~』なんて、明らかに私が拒絶したみたいでしょう!?私を悪妻にでも仕立てあげたいんですか?」
「め、滅相もない・・・。千麻ちゃんは良妻の鏡だと、」
両手を私に示して焦って作り上げた笑みで賞賛。
不完全な笑みと取ってつけたような言葉だと鼻であしらい顔を横に背けると。
このひと悶着にとりあえずの休止符を感じたのか、フッと小さく笑いを零した彼の動く気配。
次の瞬間には腰に感じる彼の熱、追って呼吸を奪って重なった唇。
一瞬、脳裏に浮かんだ彼女とのそのシーンに眉根を寄せて、でもそれ以上に大きく浮上した感情が自然と体を突き動かす。
独占欲。
『私の物』だと、この場に彼女がいないというのに、示すように彼の背中に手を回して引きよせて。
彼女がしたようなキスより濃密に重ねて自分の印象の上書き。
記憶しないで。
一瞬でも・・・、違う唇のキスを思いださないで。
・・・・・・・重ねないで。
自分と・・・彼女を。
「んっ・・・ひぃま・・ひゃ・・ん・・んんっ・・・」
「・・・・」
「んっ・・ちょっ・・・の、濃密すぎて・・・欲情しちゃうって・・・んっ・・・」
独占欲に忠実に感情任せに唇を重ねたら、自分で気がつかない程濃密になっていたそれ。
キスの合間に挟まれた彼の満更でもない困った声の指摘で気がついたほど。
それでもすぐに、聞こえなかったように唇の隙間を埋めて余計な言葉の封印。