夫婦ですが何か?Ⅱ
非難するように自分に覆いかぶさっている彼を睨み上げると、それを緩和させるかのように眉間に落ちた水滴。
彼の髪からもポタポタと落ち続けるそれが私の頬に落ちて静かに肌を滑って落ちて。
全てに不満を告げたいのに、その声は響くことなく静寂の空間。
呑まれた。
彼の目に。
狂おしい程愛おしい。
そう言いたげなまっすぐなグリーンアイに。
「・・・・・・布団・・・濡れますが・・・」
「うん・・・」
「風邪・・・引きます」
「うん・・・寒い?」
「・・・・・・」
ああ、これも・・・言葉遊びですよね?
含みを充分に理解して、問われた言葉にどう返答するのが正解か。
【らしく】『着替えましょう』と意地悪に答えても、
【らしくなく】『抱きしめて』と媚びたように答えても。
行きつく時間は同じだろう。
なら・・・・、
「風邪ひいて・・・・弱ってるあなたも結構好きです」
フッと口の端を上げての言葉遊び。
それに答えるように笑う彼もまた、
「俺も・・・弱ってるグダグダ千麻ちゃん結構好き・・・」
言い終われば必然。
むしろ長い長いインターバルだったと思うのだ。
でもいつも以上に熱を得ることのできたインターバル。
シーツが絡むもどかしさでさえ欲を煽るような。
濡れた髪が肌に張り付く感覚でさえ扇情さを増して。
いつも以上に・・・・お互いに過敏。
お互いに・・・・嫉妬。
お互いに独占欲疼いて・・・。
燃焼・・・・。
「・・・・・・はぁっ・・・何ていうか・・・・愛の全力疾走・・」
「・・・・響きが馬鹿っぽいんですが」
「ああ、無理無理、」
「はっ?何がですか?」
「今日は千麻ちゃんの悪態は俺に効力発しないって言ったの」
呼吸もまだ平常よりは上がっている情事後。
濡れたシーツの心地悪い感じを誤魔化すように、2人で寄り添って芋虫のように被害のなかったタオルケットに包まっての会話。
逃げ場のない状況でのその一言に精一杯の不満を眉根に示してみても、言葉の通りに逆に嬉しそうに口元の弧を強めた彼。
ああ、今日という日はもう自分に勝ちはないのだと諦めの溜め息をつくと、彼の言葉に従順に、流れに逆らわずにまだ熱い体をギュッと抱きしめた。