夫婦ですが何か?Ⅱ
「千麻ちゃんが・・・悩んでる内容は理解しても、その解決方法が分からない。
自分の『必要性がない』って言うのに、いくら『好きだ』『大切だ』ってまっすぐに言っても伝わらないし。
俺と紅ちゃんの関係を本気では疑ってないのに、どうしても引き合いに彼女の存在がチラついて。
・・・・・・っ、どうしていいのか、何を求めてるのか分からない」
「・・・・・・」
時間が重なるほどに迷路が深まって、深刻さだけが増して。
とうとう再発してしまった彼女の症状。
こうなっては抱きしめるどころか触れる事その物が叶わない。
強い拒否反応示し、自分の声の響きでさえ彼女に苦痛を与えている現状。
それでも、
それでも、必死にその愛情を伝えるように、少しでも伝わってほしいと些細な日常をメールにしたためて。
その日常に反応してくれた彼女の『いってらっしゃい』の響き。
寝起きに飛び出して来たような姿で、どこか必死であった表情が今も強く記憶に残る。
いつもの千麻ちゃんだった。
あの瞬間、咄嗟にボタンを押して扉を開くことも可能だった。
でも、やはり不安で、
勢いで俺の前に姿を出したけど、すぐにまた青ざめて蹲るんじゃないかって不安で。
ただ、その言葉に応えるように笑う事であの瞬間は距離を置いた。
あの後・・・・千麻ちゃんは大丈夫だったのかな?
不快感で苦しんでないといい。
自分のサングラスにそっと触れて、更にグリーンアイを隠すように顔に押しつけて。
ヘタレな自分の現状に小さく笑って、うっかり自分の弱音を晒しすぎたと息を吐いて区切り。
「ま、・・・いいや。撮影場所に移動しようか」
「・・・・・・総称するからいけないんですよ」
「・・・・・」
もう、返答はいい。と、言う様に背中を向けて歩きだしていたのに、その背後から響いた声に足を止める。
でも、響いた言葉だけでは詳細は分からず、求める様に振り返れば嫌味に口元に弧を描いた男の含み。
あっ、ムカつく。
「・・・・・で?」
「何がですか?」
「その続き、」
「もういいのでは?」
「っ・・・本当に揚げ足ばっか・・・・」
さすが我が奥様と対等にやりあっていた男だと、皮肉にも痛感して舌打ちすると。
その反応が望んでいた物だったらしい男がクスリと笑って歩きだす。