夫婦ですが何か?Ⅱ
トドメとばかり再度唇を押し当てて、それでも今度のは本当に軽い接触のそれ。
さぁ、済んだ済んだと言うように、終わりを告げる為の抱擁で。
掴んでいた胸座をパッと離すと何事もなかったかのようにキッチンに向き直って。
捉えた拓篤は案の情顔を赤くし、『見てないから』と言わんばかりに視線を逸らしてビールを煽り。
紅さんはまったく興味なさげに鍋の具材の煮え込を確認している。
そんな背後から、
「千麻ちゃん似の男の子だったら・・・モテるんだろうなぁ、」
と、しみじみいう様な彼の声に思わず噴き出して振り返ってしまう。
「私は別に今までの人生モテた記憶はありませんが?」
「千麻ちゃんが気がついてないだけでしょ」
「・・・特殊男子にはモテているのかもしれません」
言いながらまずは拓篤を振り返り、その後彼に視線を移すと『お前もだ』と言うように見つめ、指折り数え、
「どS、オタク、どM・・・より取りみ取りとはこの事でしょうか?」
「俺も特殊男子入り!?」
「まぁ、インパクト無いと私がまず興味を示さないかと」
「ある意味千麻ちゃんが特殊女子なんじゃん」
「だって、マンション戦隊のレッドですから、そん所そこらの女子のタイプとは違うのですよ」
言いきって、話は終わりだと背中を向けて、調理の再開だと紅さんの横に戻り鍋を覗く。
そんな合間に彼も立ち上がり、こちらの複雑だけども平和な流れに小さく笑い、それに満足気に数回頷くと寝室に向かった。
彼女が言う手順や分量をメモに記入し、後は蓋をしてしばらく置くのみというタイミングに着替え終わった彼がリビングに戻って。
当然、もう無効。
犯罪者ルックから解放され平常通りの部屋着に身を包んだ彼が、キッチンに入り込んで冷蔵庫を開けるとビールを取りだす。
それを羨ましいとチラリ視線で確認し、すぐに意識するように自分の腹部に指の腹で触れてみた。
「ところで、」
「はい、」
「今日は何で2階にいたの?」
「ああ、・・・一度あなたの部屋まで上がったんですが見事すれ違いで降りた後で。すぐに追って降りたんですが2階での足止めが長く、いっそ階段で降りようとしたらあの位置からあなたを見つけたんです」
「ご、ご苦労様です」
ざっと詳細を語ってみれば、苦笑いで聞き入れ持っていたビールを開封した彼が一口それをごくりと飲みこみ、すぐにそれに伴う疑問に小さく笑って私に問いかけた。