夫婦ですが何か?Ⅱ





この場所がどこであろうと、誰がいようと、お構いなしに欲望を口にして。


何が悪い?とばかりに羞恥もなく開き直って。


でも、知ってるんですよ?


虐めるポイントだって事。


深く呆れたような息を吐いて腕を組みながら非難するような上目遣いを彼に向けて。


それに多少怯んだような表情を見せた彼が『ごめん』と小さく呟き、その身をくるりと廊下に向け直したのを合図に手を伸ばす。


私が触れた事で反射的に振り返った彼の胸座を雑に掴めば、



「っ、うわっ、ごめんなさい!浮れすぎました!」



その反応・・・。


私が殴るとでも思ったのだろうか?


まぁ、そんな勢いに見せかけて乱暴に行動したんですが。


まんまと期待通りに焦りを見せた彼にニッと口の端をあげて、勢いと気迫に負けた彼がよろめいて壁に寄せられ強めに壁に背中をぶつけた。


でも、


痛みなんて、別のところに意識飛んで感じてないでしょ?



「っ・・・・・・」


「ーーーはぁっ、・・・おかえり、ダーリン」


「・・・・・た・・・ただいま・・」


「ああ、でも・・・【チュッ】の順番が前後入れ間違えましたが・・・良いですよね?」


「じゅ、充分です・・・吹っ飛びました。・・色々、疲労とか意識とか・・・・今健在なのは羞恥心のみかと・・・」



雑で強引に彼を壁に追いやって、戸惑っている彼の唇に食いつく様に接触を与えて。


一瞬の間に濃密さを与えるとゆっくり離して自分の唇を舌で舐めて口の端をあげる。


もちろん背後には紅さんと拓篤と言う傍観者有りのキスシーンで。


多分紅さんは何の感情の揺らぎもなく無表情でそれを捉え、拓篤はポカンと顔を赤くして見ている気がする。


でも赤いのは拓篤だけじゃなく、今愛妻である私に男前に唇を奪われたヒロインの様な旦那様も然り。


そう、言動までは羞恥もなく堂々とするくせに、実際に人前の抱擁を自分の意思でなく不意打ちで受けた瞬間は彼の隙。


見事羞恥に沈んで今のように馬鹿正直に全面で表してしまうのだ。


うん、可愛い。



「お、男前すぎて心臓が超ドキドキいってるんだけど!?」


「ああ、すみません。入荷した際に発注ミスで【可愛い】でなく【カッコイイ】を選んでしまってたみたいです」


「こ、紅ちゃんや拓篤さんに見られてますけどぉ?!」



その言葉に確認するようにチラリと一瞬後ろを振り返り、すぐに怯んで動揺露わなグリーンアイを見つめて微笑。



「見られてますね。・・・・でも、それが何か?」


「っ・・・カッコイイ~・・・」



ええ、ええ、そうでしょうとも。


私はヒロインよりヒーローの方が似合う女である様ですから。



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