夫婦ですが何か?Ⅱ
「大丈夫ですから・・・、逆に・・食欲ありすぎて困ってます」
『フハッ・・・いいじゃない。いっそ見た事ないくらいに太ってみたら?フニフニになって抱き心地いいかもしれない』
「それだと現状抱き心地悪いみたいですね」
『悪くはないけど、折れそうで恐い?』
「そんな軟な造りじゃありませんのでご安心を。・・・そろそろ本当に仕事に戻ってください。それでなくとも今日は、」
『分かってるよ。早めに片付けて夕方には帰るから』
「・・・・・お願いします」
『じゃあ、また後でね、』
小さく笑った息遣いを拾い上げ、すぐに静かに通話を終え無音になった携帯を耳から離して。
感傷に浸るように待ち受け画面の翠姫と彼の寝顔を見つめ、テーブルに置いてあったエコー写真に視線を移しながら、再度携帯を操作し一つの番号を拾い上げるとコール音を耳に流しいれた。
アイスで欲求を満たして、再び太陽の熱に苛められながら帰宅を果たして。
エレベーターの浮遊感にまで睡魔がくすぐられる自分に呆れる。
でも眠ってしまうほどの間もなく扉は開かれて、馴染みあるフロアに降り立つと迷いもなく自室に。
では、なく、最初に隣室の扉を叩く。
正確には【チャイムを鳴らす】だけども。
大して待つこともなく中で人の動く気配を感じて、すぐに扉の開錠音が響きゆっくりと開かれて。
それを自らも開いてお土産に買ってきたアイスの箱を手前に差し出した。
「翠姫の一時保育ありがとう拓篤」
「ううん、良い子だったよ翠姫ちゃん。でもついさっき寝むちゃった」
差し出された箱を受け取りながら、いつもとなんら変わらない笑みを浮かべた拓篤が『入って』と中に促して。
それに素直に従い靴を脱いで廊下を歩く。
ふわりと感じる拓篤以外の匂いに、気がついていてもあえて口にせず。
リビングまで進めば相変わらず物に溢れてはいるけれど、整頓はされている部屋。
「押しかけ女房様様かしらね、拓篤」
「う・・うん・・・、」
「最近は目の下にクマ出来てないけど・・・・安眠出来るようになったのかしら?」
「安眠は・・・してないけど・・・、慣れた・・かな」
ハハハっ、と乾いた笑みで後ろ頭を掻いた拓篤に同情していいのかどうなのか。