夫婦ですが何か?Ⅱ
そんな私に諦めた様に息を吐いた彼が、自分の物だと示された服を摘まんで確認しながらのご機嫌伺い。
困った様に眉尻下げ、でも私をこれ以上刺激しない様にと口元に弧を描いて。
「・・・何怒ってるのさ?」
「怒ってません」
「そういう感情明確な口調での否定は『怒ってるから気にして〜』にしか聞こえないけど?」
分かってますよ。
自分の口調が否定を示す反応でない事くらい。
それでも抑制不可能な感情で、半分以上は彼にとってはお門違いで八つ当たりな視線で睨み返してしまうと。
「うっわ・・・なんだろ?このやさぐれた微笑ましくないキャラクター。ミ○が缶ビール飲んでるって衝撃なんだけど?」
「・・・・」
「無視っ!?」
「自由に喉を潤し、感情を解放することも出来ないんですか?この家では、」
「いや、千麻ちゃんの家でもあるしご自由に。・・・だけど、」
徐々に私の頑なな態度に焦りと疲れをチラつかせる彼が、軽く後ろ頭を掻くと服を手に歩きだす。
そして流れるままに私の前に立つと私の腕で眠っている翠姫を抱き上げ背中を向けた。
ふわりと香ったいつもの匂いが微かに苦く感じた嗅覚に、追って聴覚にもその苦味を流し込まれる。
「イライラしたママの声は子守唄には似つかわしくないでしょ?」
チクリと痛みを残す嫌味な言葉の棘に、口に運んでいたビールを離してその姿を見つめる。
ゆっくり柔らかに寝ている翠姫を微笑みながら寝室に向かう姿に言い様のない罪悪感。
正論がゆえにインパクトがでかい。
言われた言葉に【母親失格】という文字を頭に浮かべ、カンッと音大にキッチンにビール缶を置くとその身を壁に寄りかからせた。
最悪だ。
本当に・・・・失態・・・。
この感覚もいつぶりか。
彼に失望され呆れられるような感覚。
ぐるぐると消化不可能な感情に飲み込んだアルコールも悪く作用して目が回る。
全てをシャットダウンするように目蓋を下してただ平常よりも強く早く体内に響く心音に集中した。
つもりが、
集中はいともあっさり他に奪われ、与えられたそれに一瞬だけ薄ら目蓋を開けてまたすぐに閉じて浸る。
静かに柔らかく密着したそこから酸素を奪われ、同時に抱く葛藤も吸い取られるようで。
それにしても気がつかなかった。
触れ合うまで彼の接近に。