夫婦ですが何か?Ⅱ
「我が家の愛らしきムー〇ン姫は寝かしつけてきたよハニー」
「・・・・寝かしつけたのは私で、あなたは都合良しにベッドに寝かしただけでしょう?」
「うーん、役さながらに捻くれてるねぇ、怒りんぼミ〇は・・・。
で?・・・何を怒ってるのかな?」
『言ってごらん』
そんな響きで至近距離から私を見下ろしてくる姿は確実に自分よりかは冷静で大人の対応だと感じてしまう。
しかし如何せんスタイルがアウトローな役作りの装いなのが軽く残念な部分と言えるかもしれない。
「だから・・・怒ってません」
「怒ってるじゃん」
「これが私の平常ですが何か物申したいことでも?」
「・・・・・意地っ張り」
言葉の終わりに非難するように摘ままれた私の鼻。
キュッと強めに戒めのように刺激が走り、それに不満を告げるように見つめ上げれば絡むことなくグリーンはすでに違う処に視線を移していた。
そしてふわりと微々たる風を巻き起こし、それに自身の香りを舞わせて私の前から離れていく。
でも本当に【意地っ張り】なのだ私は。
馬鹿正直に焦って心臓が跳ねたくせに瞬時に振り返って許しを請う事もない。
ただ押し黙って虚しく唇に残る余韻に苦さを噛みしめているだけで。
・・・・どっちが子供?
「・・・で?」
不意に入りこんだ声に心では驚き、表面では何食わぬ顔で振り向いてみせる。
その表情はたった一言発せられた声音で大まか予想はついている。
馬鹿みたいに私に過剰に甘い男だ・・・・彼は。
脳裏にその表情浮かべ振り返り捉えたのは予想と違わぬ彼らしい笑み。
「何を怒ってるのかな?ハニー?」
「・・っ・・怒ってないです」
「怒ってんじゃん。もうっ・・何ぃ?気合入れて今から栄養ドリンク飲んでおいた方がいい?」
「・・・・・私を素直さ全開行為に連れ込みたいならご注意を・・・・、栄養ドリンク1本じゃ足らないくらい荒れてますよ?」
「・・・・・まずは言葉の交渉を大事にしようか」
「チッ・・・ヘタレ・・・」
「千麻ちゃぁん!?俺帰宅早々!夕飯もお風呂もまだなんだよ!?」
「・・・・・・はぁ・・・」
「ねぇっ・・待って?何その諦めたような溜め息・・・、切ない!!全力で俺心痛い!」
何だろう?
これも作戦の一つだったのだろうか?
気がつけばどこかいつものペースに引き込まれて、彼との何とも言えない夫婦漫才に心が緩む。