夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・忘れてたわけじゃないんだ。・・・でも・・、物でご機嫌取ろうとしてるみたいかな?って・・・渡しづらくて・・・・」
「・・・・」
「・・・・短い髪型にも合う・・・・大人っぽいの探して・・・みたんだけ・・ど・・・」
しどろもどろ。
途切れ途切れで言い訳交じりの説明に目を細めて見つめてから鏡に視線を移していく。
湯気でやや曇った鏡をタオルでクリアにし、映り込んだ姿の中に突如の贈り物を捉えて確かめるように見つめた。
彼が言うとおりに派手でもなく、私がつけていてもおかしくないアンティーク調の髪留め。
安くも小さく動悸が走ったのを隠すように無表情で見つめ、それを知ってか知らずか横から私の頭に額を寄せた彼。
耳に近い位置から響く彼の謝罪に満ちた声音。
「・・・似合ってるよ。・・・・・長いのがいいとか散々言っておいて、・・・でも、帰ってきて見た姿に惚れ直した」
都合良し・・・。
「でも・・・、都合良しに気軽に『似合うね』なんて言えなくて・・・・、言っても・・・・何を言っても今は・・・俺の言葉は嘘っぽくて・・・」
嘘・・・ついてましたからね。
「でも・・でもね・・・」
だから・・・・
「【でも】【でも】・・・多いんですよっ」
「っ・・・・ごっ・・・ごめん・・なさい。・・・【でも】・・・あっ・・・」
言った傍から言葉に混入それに『呆れた』と片手で頭を抱えてみせて、いちいちすべての私の反応に怯える彼の姿。
よっぽど・・・、よっぽど後ろめたかったんですね。
そう思って無ければ開き直って言い返してきてもいいくらいの頃合いなのに。
私に異議申し立てようなんて気配皆無の彼は謝罪の一手だ。
成程、浮気した夫に優位になれる妻の気分がこれか。
まぁ、彼のそれは浮気ではないのだけども。
「・・・・・はっきりと言葉を断言出来ないなら出て行ってください。それとも私に風邪をひかせるのが目的ですか?」
「っ・・俺と一緒に風邪ひくような事しませんか?」
「・・・そんな事ばっかりははっきり言えちゃうんですか?あなたと言う人は、」
「千麻ちゃんが『はっきり言え』言ったんじゃん!!だからさっきからずっと生殺しで苦しかった本音思いっきり言ったのに!?」
「・・・・出直し」
「うん・・・それも予測済みだったけどさ・・・」
そう言って壁に泣きつく様に張り付いた彼を腕を組みながら傍観してしまった。
そして未だ全裸なんですけど私・・・。