薔薇の夢をあなたに
魔族の出てこなくなった廊下は、変わらず真っ暗だ。その暗がりに向かって呼びかける。

「いつまで高みの見物を決め込んでいる。出てこい!」

すると暗闇の中からフードを目深にかぶった男があらわれた。

「何が目的だ。10秒以内に答えろ、さもなくばここで殺す!」
召喚獣たちはじりじりとフードの男に近づいていく。

こちらは、ロゼットさんと召喚獣を合わせれば、4対1。明らかにこちらに分がある。
それにも関わらずなぜかとても嫌な予感がした。

「くっくっくっ…」
その男は笑った。とても可笑しそうに笑った。ロゼットさんも聞こえたようだ。

「貴様、何がおかしい…」

その時、召喚獣が消えた。いや、違う、消されたのだ!男は手をかざしただけで召喚獣を消してしまった。

「なに!?」
ロゼットさんは、杖を構えて詠唱を始めるこの呪文は…、火炎で焼き尽くすつもりだ。

男は、そんなロゼットさんには目もくれず、腕を上げ、私を指差した。まるで、次はお前だと言わんばかりに。

「地獄の焔よ!敵を焼き尽くせ!!!」

詠唱が終わった。突如出現した火柱は男を飲み込んだ。

「な…何で……」

飲み込まれても男はなお平気そうに火の中に立っていた。
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