薔薇の夢をあなたに

「ロゼット!!そいつはダメだ!!!」
その時、男の背後から団長が現れた。

目を疑った。顔の半分はやけただれ、右足が折れているのが分かる。しかも、無数の切り傷、呪いの痕跡も見られる。

「団長!!!!!!」私は悲鳴をあげた。

その声に反応したのか、フードの男は手のひらを私にかざした。

パリンっ
私を守っていた結界が全て砕けた。

「ジュリエット!」
二人の悲鳴が聞こえる、私は反応して次の一撃を避けた。

私がもと居たところには、黒い焦げ跡があった。

考えている暇はなかった。ドレスの裾を思いっきり破く。気付くとロゼットさんが部屋に入ってきて、私の前に立つ。

なんと団長は廊下の入り口で倒れている、あの出血…おそらく致死量だ。

一時期は潜んでいた悪魔たちが再び現れる。部屋の中はあっという間に悪魔でうめつくされた。

私はかたっぱしから切り捨てた。切りつけた勢いで後方の悪魔を薙ぎ払い、心臓を突き刺す。悪魔の黒い返り血で切っ先が濡れた。

視界の奥では、フードの男がゆっくりと迫ってきていた。弱ったところを狙うつもりだ。

頭を使う余裕なんてなかった、ただ目の前の敵を切るしかない。生き残るためには。

突如、部屋の中を突風が吹いた。一瞬すべての悪魔が部屋の外に押し出される。

「ジュリエット!!!!」

ロゼットさんが私の足元に魔方陣のカードをなげつけた。瞬時に魔方陣が開き、私の足元に浮かぶ。気付くと、紫のもやで何も見えなくなる。

「ジュリエット様…どうか御無事で…」

ロゼットさんの最後のつぶやきも聞こえなかった。私はひとり異世界にねじ込まれた。
< 26 / 146 >

この作品をシェア

pagetop