薔薇の夢をあなたに
レイが後ろから顔を出す。
「久しぶり。みんな」







その瞬間、一気に視界が開けた。
私を囲む一座のみんながレイに跪いたのだ。







「レイ様、ただいま戻りました。」
「おかえりロゼット。
君の不完全な魔法のおかげでジュリエット様は全治3か月の重傷を負われたよ。」
心底不機嫌そうな声で話すレイ。






「申し訳ございません…力及ばず…」
「部下の尻拭いをするのは僕の仕事の一つだから、きっちり手当は施したよ。
あとで、きちんとジュリエット様にお詫びをするように。」
「はい、申し訳ございませんでした…」






「あいかわらずの鬼団長ぶりだな、レイ。」
唯一、跪かないままにレイに話しかけたのは団長だ。







「やぁ、デイヴィス。ごきげんよう。
そもそも君が付いていながら、なぜ姫を危険にさらしたんだ。
腕がなまったのかい?」









「ははは、久々の再会なのに冷たい奴だなお前は。3年ぶりだろう?」







「久々だろうと、君たちは任務を怠った。それを正すのは僕の使命だ。」
レイはツンとそっぽを向いた。
そして、ロッドを小さく封印すると、ベルトにしまった。






「ちょ、ちょっと待って?どういうこと?
団長たちとレイは知り合いなの?」
一人だけ全く話についていけない!さっぱり意味が分からないわ!!








「こうなってしまっては、もう後戻りはできないな。
デイヴィス、必要な情報は集まったんだな。」
団長の本名を呼び捨てにするレイからは、さっきの穏やかさは全く感じ取れない。
冷たい氷のようだ。







「まぁ、ある程度はな。
だけど完璧とは言えない。
でも、そうも言ってられない状況になっちまった。」








「ふん、一度話を聞く必要があるようだな。とにかくいったん城に戻ろう。



ジュリエット、一座のみなさんを大広間に通してくれないか。
僕は壊れた結界の修復をしてくる。」






レイは私を見ると、もとの穏やかな笑顔を一瞬だけ見せてくれた。
けれどすぐさっきの冷たい顔に戻り、ロゼットさんに声をかけた。






「ロゼット、君が僕の結界を壊せるようになるなんて正直驚いたよ、よく鍛錬したんだね。
でも今度はもっと静かにやらないと、すぐ敵に感づかれるよ。」
「は!はい!」






レイはそういうとシルバーに乗って、あっという間に城門を飛び出していった。
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