薔薇の夢をあなたに
「単刀直入に言おう。
君には我々が記憶の封印をかけている。
術者は目の前の魔法使いレイだ。」






「え?」
「私たちがダラダラ君の生い立ちを説明するより、
記憶を取り戻す方が早いだろう。
レイ、頼む。」








「ちょ、ちょっと待って!!
私記憶ならちゃんと持ってるわ!
だって、私はずっと一座で…」
その時気が付いた。私いつ一座にはいったんだっけ…








「君の記憶にはいくつかのほころびがあるはずだ。
なぜなら、それは本当の記憶ではないから。
改ざんされたものだ。レイによってな。」
私はちらっとレイを盗み見る。









レイはこの話が始まってから、
ずっと優雅に足を組んでそっぽを向いている。
会話に参加する気はないらしい。









「君にはある事件から3年間、
旅芸人の娘として生きてもらった。
その理由を話すためにも、まずは君にすべてを思い出してもらおう。
レイ、頼む。」














……















完っ全に無視。のようです…。
団長の額に青筋が浮かぶ。








「レイ。」
「やだ。」




「おい。」
「うるさい。」




「クソガキ」
「オッサン」




「…」
「…」










「くすっ、子供みたい…」
子供のように駄々をこねるレイを初めて見た。
今まで見たどんな姿より幼く見える。







「ジュ、ジュリエット??」
私に笑われたことがショックだったのか、一瞬止まるレイ。







「ねえ、レイ。私さっきも言ったよね、
私は自分が知りたいって思ったことはあきらめないよ?
ずっと、レイに記憶返して!ってつきまとうよ?」






「そ、それは…」
「結局レイはきっと私の願いをかなえてくれるでしょう?
それなら遅くても早くても同じよ、
お願い。私は知りたいわ。」
「ジュリエット…。」







ふとレイは額をこつんとぶつけてきた。
「君がそう言うなら、僕には断る理由がないよ…。」
「ふふ…ありがとう、レイ…」










そんな私たちを見て、団長は
「何でお前は相変わらずジュリエットには激甘なんだよ…ったく。」とぼやいた。









「記憶を戻すっていうことは、
その時間が一気に帰ってくるということだ。少し負担がかかるよ。」
「分かったわ。」
私はベッドに横になって答える。







団長とロゼットさんも立ち会ってくれていた。
レイはいつもとは違って、とても長い呪文を詠唱し始めた。
優しい緑の光がどんどん私を包んでいく。








この呪文…どんな世界の言葉なんだろう…、
私はゆっくり眠りに引き込まれていく。









「……記憶の箱よ、主に隠した歴史を戻せ。」
その瞬間、私の中にすごい勢いで「それ」が流れ込んできた。





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