薔薇の夢をあなたに
「うん。でも、君たちほど伝えるべきことはないんだ。」
レイはたたずまいを直すと、私に向き合った。











「僕もデイヴィスたちと状況はかなり似ています。
姫を送り飛ばした後、城に戻ると、悪魔はきれいにいなくなっていました。








僕も負傷していたので、深追いはせず、城に残る多くの亡骸の葬儀を行いました。
そして、埋葬も。最初の一週間はひたすらその作業でした。










その後城を隠す結界を何重にも張り、城を外界から完全に隔離しました。
続いて城の修復、庭園の整備に入りました。









一人では手が足りず、小人族に協力を仰ぎました、彼らはとても協力的に働いてくれました。
ここの庭園の手入れはほとんど彼らに任せています。










事後処理が一段落した後は、魔力が衰えないように毎日鍛錬を欠かさず行いました。
この3年間は城の守り人として任務を全うしてきたつもりです。










…実は僕からお伝えできることはこれくらいなのです。
騎士団長として【太陽の国】にほとんど貢献できず、お恥ずかしい限りです……姫?」











ふと私の顔を見たレイは唖然とした。
「姫!?どうして…」









私は涙が止まらなかった。
「姫?どうか涙を止めてください…僕のためにあなたがなく必要なんてないのに…」










あわてて側にきてくれる。
この優しい魔法使いはずっと私たちの城を、この国を、たった一人で守り続けてくれていたのだ…3年もの間…。
どんなに寂しい時間だったんだろう…想像もつかない…











「レイ…ありがと…」
私はうまく笑えなかった。








彼は困ったようにはにかみながら「そのお言葉だけで、僕の時間は報われます。ありがとうございます、姫。」恭しくこうべを垂れた。
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