魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 勇飛くんにツッコミを入れられ、無理をして少し笑ってみる。そうすると、ほんの少しだけ緊張が解けた気がした。

 そうやって他愛ないおしゃべりをしながら歩いているうちに、一つ村を抜けて森に入った。私たちは木陰に座って、マスター・クマゴンが持たせてくれたサンドウィッチの包みを広げる。

「このぶんだと、夕方までには王城に着けそうだね」

 勇飛くんが水袋から水を一口飲んで言った。

「夕方かぁ……」

 一気に声のトーンが落ちてしまう私。

「遅くなりそうだったら、どこかで一泊してもいいし」
「い、一泊!?」

 勇飛くんと二人きりで!?

 マスター・クマゴンが聞いたら、“不純異性交遊”だとか言って反対しそうだ。

「まあ、ハイキングだと思って楽しく行こうよ」

 勇飛くんが最後のサンドウィッチを食べ終え、手をぱんぱんと払って言った。

「はぁい」

 私もしぶしぶ立ち上がる。デートだと思えばがんばれるかな。

 そう思ったけれど、森の中を進むにつれて木がうっそうと生い茂り、光が差し込まなくなってきた。

「なんだか怖いね」
「そう?」
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