魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「書を見たときは、清楚で凜とした才女ってイメージを持ったな」
「持った?」

 彼の言葉が過去形だったことに私は不満の声を上げる。

「ああ、いや。書を見たイメージだよ」
「すみませんねぇ、現実はこんなもんで」

 清楚でもなく、凜としてもなく、才女でもなく。成績も中ぐらいで運動も普通。書道以外たいした取り柄のないドジでおっちょこちょいなチビ。

 おもしろくない気分で、リンゴをもしゃもしゃと頬張った。

「でも、ギャップに驚いたせいで、もっとセリのことを知りたいと思うようになったんだ」

 勇飛くんの言葉に彼の方を見ると、少し照れた表情で次の一切れを渡してくれた。

 もっとセリのことを知りたい……。知って、どう思った? 頬にキスしてくれたり、薬を口移しで飲ませてくれたりするくらいだから、少しは好意を持ってくれてる……よね?

 そんな気持ちで彼を見つめたとき、マスター・クマゴンの咳払いが聞こえてきた。

「さ、村に帰ってきたわよ。このままソードマン・ハウスまで行くからね」

 そうしてしばらく馬車に揺られていたが、やがて馬車が止まり、マスター・クマゴンが荷台の幌を開けた。

「魔法図書館に行くのは、昼食を食べてからにしなさい」
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