魔恋奇譚～憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「本当にありがとう」

　殊勝な気持ちで受け取ると、マスター・クマゴンは涙のにじんだ目をして言う。

「あんた、食べないとやってられないでしょうが」
「うん、本当にそうなの」

　目頭が熱くなってきて、私たちはどちらからともなく抱き合った。マスター・クマゴンの大きくて温かな体に包まれながら、今までの感謝の気持ちを込めて、その背中を強く抱きしめる。

　そのとき、マスター・クマゴンの背後から咳払いが聞こえてきた。

「おはよう」

　ちょっとムスッとした勇飛くんの声。私はマスター・クマゴンから離れた。

「今セリに食糧を渡したところよ。あなたも気をつけていってらっしゃい」

　マスター・クマゴンの巨体に抱きつかれて、頑丈な鎧姿の勇飛くんも一瞬目を白黒させたが、すぐに穏やかな表情になってマスターの背中を叩いた。

「いろいろありがとう。成功を祈っていてください」
「当たり前でしょ、言われるまでもないわ」

　マスター・クマゴンの言葉に勇飛くんは苦笑したが、すぐに表情を引き締めた。

「それじゃ行こう、セリ」
「うん」