魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 束の間の休息の後、カルサイト村を抜けて川沿いを歩く。上流に行くにつれて徐々に川幅が狭くなり、西の空が茜色に染まり始めたころ、三本の尖塔が美しい大きな城が見えてきた。日が沈むにつれて、城の壁の色が茜色からバラ色、深い藍色へと移り変わっていく。

 私たちは、何も作物が植わっておらず、乾いてひび割れた畑を通って、城が見える木立に身を潜めた。

 城の中はしんと静まりかえっていて、明かりがついているのは一箇所だけ。

「あそこにネフライトたちがいるのかもしれないな」

 勇飛くんの言葉に私はうなずく。

「そうね」
「城の兵たちはどうしているんだろう」

 勇飛くんがつぶやいたが、私にもわからない。そもそも王様が操られていたことさえ、国民は誰も知らない様子だった。

「セリ、体調はどう?」

 勇飛くんが私を見て訊いた。

「脚がだるだる~て感じだけど、体力は十分あるよ」
「それなら、もう少し暗くなってから城へ忍び込もうか」
「もっといい方法があるよ。偵察隊を送るの」
「偵察隊?」
「うん、使いコウモリを忍び込ませようと思うの」
「大丈夫? 魔力を消耗するだろう?」

 勇飛くんは心配そうだ。
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