魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 そっとささやくと、コウモリは私の手から飛び立った。そうして城の上を旋回し、塔の上の空気孔から中へと入っていく。

 目を閉じると、中の様子が見えてきた。

 そこは狭い屋根裏で、暗い螺旋階段が下へと続いている。コウモリは螺旋階段を飛びながら降りていき、長い廊下に出た。手前の階段を一番下まで降りると、地下に出たようだ。王様が囚われているとすれば、牢かもしれない。耳を澄ませると、かすかに水の滴るような音がして、誰かのうめくような低い声が聞こえてくる。

 そこの様子をもっと知りたい。コウモリは私の思いに従って、声の聞こえてくる方へと飛ぶ。

 番兵とおぼしき二人の男が、向かい合うようにして椅子に座っているのが見えてきた。城で出会った初めての人間だけど、居眠りをしているようで、頭を垂れてときどきいびきをかいている。

 二人の頭上を抜けてさらに進むと、水に濡れ苔に覆われた廊下の先に、鉄格子で仕切られた部屋があった。そこには何人もの大人の男性がうつむいたまま座っている。眠っている者もいるが、起きている人もいるようだ。

 彼らに話しかけられないだろうか。

 私は目をつぶったまま、小声で問いかけてみた。

「あなたたちは誰ですか?」

 反応がない。聞こえないのだろうか。もう一度、今度は少し大きな声で呼びかけると、一人がのろのろと顔を上げた。髭が伸び放題に伸び、痩せた顔をきょろきょろさせたが、やがて頭を垂れる。

「なんだ、空耳か……」

 聞こえてるんだ!

 私は大急ぎで言う。

< 183 / 234 >

この作品をシェア

pagetop