魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「セリ、泣いてるの? 泣かないで……。俺はセリのことを守れて……嬉しいんだから……」
「そ……んなの……」
「笑ってよ……最期に見るのは……セリの笑顔がいい……」
「最期なんて言わないで。今助けるから!」

 私は勇飛くんの体と私の体の間に挟まれている杖を抜き出した。

「セリの笑顔が……一番、好きだったよ……」
「なんで過去形? これからも好きでいてよ!」
「ごめん……無理っぽい。けど、約束して……セリはこれからも笑うって……。何があっても……笑うって……」

 勇飛くんがゆっくりと目を閉じた。

「やだ、そんなのやだ!」

 私は杖を構えた。

「待ってて、今度は私があなたを守る! 助けてあげるから!」

 杖をギュッと握りしめる。

 魔法図書館さんが言ってたあの魔法。魔法使いの命と引き替えに、剣士の命を助ける禁断の呪文。

 涙でにじむ視界、震える手。それでも、必死にスペルを綴る。

「アナバイオーシス!」

 直後、体の中からすべての力が抜け出していくような感覚に襲われる。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、そんなものすべてが失われ、何も感じなくなるような……。

「セリ?」
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