魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「ね、王様は無事かな……?」
「え? うん、無事だよ。約束の時間になってもコウモリが来ないから、みんなで城中を探し回って大広間に攻め込んだんだ。ネフライトとディヴィナも、ほら、大佐たちがとらえたよ」
「よか……た……」
「セリぃ!」

 頬に落ちる温かな滴は、勇飛くんの涙かな……。勇飛くんでも泣くんだね……。

「もう泣かないで……」

 でも、もうすごく疲れちゃったんだ。休んでもいいよね、目を閉じても構わないよね……。

「セリ、目を開けろ! 頼む、目を開けてくれ! 死ぬなぁっ」

 勇飛くんの叫び声も、兵士たちの足音も怒号も、もう遠くぼんやりと聞こえるだけ……。 
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