魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 お母さんが疲れた顔に安堵の表情を浮かべ、私の手をしっかりと握る。

「心配かけてごめんね」

 かすれた声で言うと、お母さんがそっと私の額を撫でてくれた。

「ほしいものある? いきなり固形物は無理だけど、果物のジュースならいいって先生がおっしゃってたわ」

 いつになく優しいお母さんの声。ううん、と首を振ると、お母さんがもう一度私のおでこを撫でた。

「じゃあ、お父さんとお兄ちゃんに連絡してくるわね。二人ともずっと心配してたから。少し待っててね」

 言ってお母さんは病室から出て行った。

 そういえばお母さん、子どものころに私が病気で寝込んだら、よく額を撫でてくれたよね。早くよくなりますようにっていうお母さんのおまじないだった。懐かしい気持ちになって微笑んだとき、ドアがノックされた。

「はい」

 どうにか返事をすると、クマゴンが顔を覗かせた。

「じゃ、先生、もう帰るな。いやあ、しかし本当にびっくりしたよ。津久野と柊が電車で倒れているところを発見されたって連絡があったときには、大騒ぎになったんだぞ」
「え?」

 勇飛くんも?
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