魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 ハッとして振り向くと、そこにいたのはやっぱり勇飛くんだった。中世の鎧でもなく、商人風のシャツに革のベストでもなく、グレーのセーターにジーパンという格好で、黒いコートを腕に掛けている彼。

「ユウヒく……と、柊くん」

 勇飛くんが私の隣に並んだ。

「俺たち、電車の中で意識を失っているところを病院に運ばれたんだってね」
「そうみたい。私、さっきクマゴンに教えてもらったの」

 私はかすれた声で言った。

 二学期最後のあの日、勇飛くんは私の斜め前に座っていた。熊田先生は化学テロが疑われたと言っていた。あの座席の辺りだけ、何か意識を失うような薬品でもまかれていたんだろうか。

「寒いだろ」

 勇飛くんが言って、手に持っていたコートを私の肩にかけてくれた。きゃー、憧れの勇飛くんのコート!

 頬ずりしたくなるのを懸命にこらえてお礼を言う。

「ありがとう」

 勇飛くんが晴れた空を見上げながら言う。

「俺、ずっと……すごく不思議な夢を見てたんだ」
「ユウ……柊くんも?」

 私の言葉に、彼が一度瞬きをして私を見る。

「セ……津久野さんも?」
「うん。でも、ユウ……柊くんのとは違う夢かも」
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