魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 熊田先生のだみ声に、勇飛くんが私から手を離して両手を挙げる。

「まったく、そういうことは人目につかんところでやれ」

 遠ざかっていく熊田先生の呆れ声を聞きながら、勇飛くんがいたずらっぽく目配せをした。

 姿が見られるだけですごくドキドキして、声が聞けたらとても嬉しくて、しゃべりかけられたら倒れてしまいそうで。そんな憧れの存在だった彼と一緒に過ごした一週間、勇飛くんはいろんな表情を見せてくれた。もっとそばにいて、もっともっと見てみたい。

「そういえばさ、クマゴンって現実世界でもオネエキャラなのかな」

 勇飛くんに言われて私は首を傾げる。

「わかんないね。一度訊いてみようか?」
「教えてくれるかな」
「きっと教えてくれないよね」

 私は笑って彼の横顔を見上げた。逆光で眩しいな、と思ったとき、また彼にキスされていた。正真正銘の、甘くとろけそうなキスを。
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