魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「誰じゃ!」

 ひぇぇぇぇぇっ。

 私はあわててドアまで走った。外に出たいのに、ドアは開かない。

「嘘っ」

 必死で引いても開かない。押しても開かない!

「助けてっ」

 私がドアをドンドン叩いたとき、今度は「痛い、痛い」という叫び声が聞こえてきた。

「いやー、きゃー、気持ち悪いっ」

 こんなところ、もう一秒だっていたくない。無我夢中でドアを叩いて引っ掻くと、「痛い」という叫び声が大きくなった。

「やめとくれ、何でも言うことを聞くからやめとくれ!」
「へ?」
「お願いじゃ、叩くのはよしとくれ!」

 私は手を止めた。“叩くのはよしとくれ”? ってことは、痛がってるのは、このドア……? というより、家!?

 私が手を止めると、大きなため息が聞こえてきた。

「なんじゃ、久しぶりに誰か来たかと思えば、いきなり乱暴じゃの。魔法使いが武闘派になっとるとは思わなんだ」

 低い声が建物中に響いている。もしかして……。

「もしかして、あなた、家?」
「家、というより図書館じゃな」

 私は瞬きを繰り返した。私自身が魔法使いなんだもの。図書館が生きてたって不思議はない。

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