魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「大変です! マスター・クマゴンの小屋が火事です!」
「何だって! 中に人は?」
「マスター・クマゴンは薬草を摘みに森へ行っていて無事でしたが、小屋には魔法使いが住んでいたはず……。村中探したけど、どこにもいないんです。村で最後の魔法使いが……」

 男性の声が弱々しくなった。蔑んでいても、魔法使いという存在はこの村に必要な存在なのかもしれない。

「セリなら大丈夫です」
「えっ、本当ですか?」

 男性の声に、勇飛くんが力強い声で答える。

「はい、心配ありません。あとでマスターの元に連れて行きます」
「そうしてください。でも、今セリさんは……どこに?」
「どうして気にするんです? あなたたちは魔法使いを忌むべき存在として嫌っているはずだ」
「はい、でも……」

 男性が声を低くして言う。

「セリさんの里親だったおばばに、うちの娘の病を治してもらったことがあるんです。どんな薬も効かず、医者にもさじを投げられて、死を待つだけの状態でした。けれど、妻に泣いて頼まれ、おばばの力にすがったんです。おばばは僕たちの普段の態度を責めもせず、高度な治癒魔法を使ってくれた……。おばばはひどく体力を消耗してしまいましたが、おかげで娘は回復しました。僕たち人間は無力な存在だ。得体の知れない力を持った魔法使いの存在をおとしめることで、人間の優位性を保っているつもりなんです」
「それをわかっている人もいるんですね」
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