魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 勇飛くんの声が辺りに静かに響いた。胸が熱くなって、視界がにじんでくる。思わず鼻をすんと鳴らしたとき、勇飛くんの声が聞こえてきた。

「セリ、おいで」

 手招きされて、私は木陰から出て二人の方に急ぎ足で歩いて行く。

「あ、セリさん」

 村人が気まずそうに私を見た。私の叔父さんくらいの年齢の人で、初めて村に来たときに、勇飛くんが怪我を負っていることで私を責めた村人の一人だった。でも、確かにあのときは責められても仕方がなかった。本当なら怪我を治す力のあるはずの魔法使いが、何もできなかった――何もしなかったのだから。

「小屋が火事ということは、マスター・クマゴンが火でもつけっぱなしにしてたのかな」

 勇飛くんの問いかけに、男性が答える。

「いいえ……マスターはそのような不注意なことはなさらないと思います」
「そうだよなぁ……。影の権力者という話だし」

 勇飛くんが私をチラッと見た。

「出かけるときは暖炉の火も消していくわ。それに、火の気のものは何もないはず。確かに木造の粗末な家で、燃えやすいかもしれないけど……」
「となると不審火の可能性が高いってことになるのかな?」
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