in theクローゼット

「あたしらのことバカにしてんの?」

「し、してません……」


 身を縮こまるせ、首を振る。


「ま、別にいいんだけどさ」

「そうそう、別にいいのよ。透のこと振ってくれたって」

「むしろ、ありがとうって感じ」


 尊大に、三人が口々に言う。


「透に告白した子なら、みぃんな透に好きな人がいるの知ってたし」

「ね〜」

「だから、アンタが透と付き合わなかったことは別にいいのよ」

「でも、さ……本当は透のこと好きなんでしょ?」


 腕を組んだ人がにっこりと笑って私を見てくる。


「そうそう、いいのよ。アンタが透に不釣合いなのはわかってるから。だから、身を引いたんでしょ?」

「大丈夫、本当のことはここだけの内緒にしといてあげるから!」


 左右の人たちまで私の顔を覗きこんできて、体が硬く縮こまる。


「ね、そうなんでしょ? 透のこと、好きなんでしょ?」


 間近で問い詰められ、指先が凍える。

 それでも、硬直した首をなんとか横に動かす。


「違い、ます……」


 例えばこの場しのぎでも、嘘はつけない。

 つきたくなかった。

 私が愛した舞、私を好きだと言ってくれた青山、青山のことが好きな稲葉……

 その三人の姿が脳裏に浮かぶ。

 その三人のことを思ったら、嘘は吐けなかった。
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