【完結】遺族の強い希望により
こどもが欲しいと願ったのは、結婚への足掛かりとしてなどではなかった。

遠く離れていても彼の分身さえ傍にいてくれたら淋しくなどない。
もしも距離が邪魔をして彼の気持ちが離れてしまったとしても、自分だけはずっと相手を想い続けていられる――。


騙したつもりなどなかった。
最後の逢瀬で身体を重ねたその時こそが、彼女の人生で一番の至福の時だった。

愛していた。
一緒の未来を見たかった。
けれどその時既に、彼女の中には明確な答えが出ていた。


国を捨てることは自分には出来ない。
数ヶ月という期限付きだから耐えられたが、その先一生となると話は別だ。
この淋しさを、文化や思想の違いから感じる孤立感、孤独を、分かっているからこそ彼に強要することも出来ない。
< 127 / 450 >

この作品をシェア

pagetop