【完結】遺族の強い希望により
『十二分に愛情を注いで育ててきたつもりだったけれど、やっぱり1人では担えない家族の役割があったのかもしれない』


存在しない父親のことを責めることはひとつも書かれていなかった。
1人で産み、育てたことを後悔している様子もなかった。
ジェシカはただ自分の無力さを嘆き、不甲斐なさを責めているようだった。


その手紙が届いたのは、冬の初めのことだった。
ほどなくクリスマスがやってくる。

『クリスマスの朝大きなツリーの下には家族全員分のプレゼントが届いていて、それは全員が揃うまで決して開けてはいけない』

遠い昔に聞いた異国のクリスマスを、彼は鮮明に覚えていた。


今この時期に手紙を寄越したジェシカが、懐古と近況報告を隠れ蓑に本当は何を望んでいるのかが、隆司には理解出来てしまった。
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