【完結】遺族の強い希望により
「いやだ、取らないで」

「みのり? しっかりしなさい。ちゃんと説明して。いるのね? 赤ちゃんが」

「殺さないで!」

「落ち着きなさい。お母さん、何も聞かずに堕ろせって言ってるわけじゃないのよ」


親に妊娠を知られたら当然堕ろせと言われるものだと思っていた。
だから母に気付かれたと知った時には脅えたが、今みのりが取り乱しているのはそのせいではない。

『堕ろせと言っているわけではない』
それまでは敵になるとばかり思っていた母親のその言葉だけを信じて、縋るしかなかった。


「助けてお母さん。いやだ、いやだ、血が……っ!」

出血だけではなかった。
普段の生理痛などとは比べ物にならない酷い痛みが子宮あたりを一気に襲い、みのりは悲鳴を上げた。
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