【完結】遺族の強い希望により
母が聞いてきたのは、みのりが既に病院にかかっているのかどうかだけだった。
まだだと答えると、そのままみのりを車に乗せて一番近くの病院へ運ぶと言った。

出血が多く、染み出ていた。
着替えるなどという悠長な考えはなく、手早くありったけのバスタオルを用意してくれたのも母だった。


「しっかりしなさい、母親になるんでしょう。出産の痛みはそんなもんじゃないわよ。母親が取り乱したらお腹の子も不安になるんだからね」


まだ大学生になったばかりだ。
別れた男との間に出来た子なのだ。
知られれば当然反対されると思っていた。
なのに母は、何も聞かずにみのりに宿った子の命を助けようとしていた。


病院に着いても痛みは引かなかったし、出血が治まった気配もなかった。
貧血気味で朦朧としていたが、気を失えない激しい痛みだった。

それでもみのりは、もう大丈夫だと思ったのだ。
母が付いていてくれる。
母が言う通り自分がしっかりしていれば、この子はもう、大丈夫なのだと。
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