【完結】遺族の強い希望により
玲奈が言った通り、階下に仏壇はなかった。


簡素な3段ほどの台に白い布がかけられている。
台の中心に置かれた、同じく白布に覆われた四角い箱らしきものの中身が遺骨だろう。

位牌、遺影、線香、お鈴。
寺か葬儀屋にでも言われるままに用意したのだろうか、必要最低限のあるべきものだけがそこに並んでいた。


見知らぬ人の良さそうな男が黒い枠の中で笑っている。
無機質に塗りつぶされた青をバックに、黒い背広と白いネクタイを着用した男が。

仕事柄スーツ姿の写真はあったのだろうが、決して不自然な仕上がりではないのに奇妙な違和感を覚える白ネクタイは、遺影用に加工されたものに違いなかった。
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