secretkey~内緒のドアを開ける君~
01
冬の朝の空気が嫌いだ
冷たい床も苦手
まだベッドの中にいたい
手足を丸めて寝ていた俺の携帯が鳴る
あ~でたくない寒い
「日向?」
「ん?」
「おまえまだ寝てんの?」
「ん~」
「ったく起こしに行ってやるよ」
「いらね」
好きだなんて言えないし口が裂けても言わない
だって相手は好きになってはいけない相手
ベッドの中で寒い部屋の冷たい床に足をつけることを想像しているとピッと勝手にエアコンがつく
俺はまた悩む
誰かいたっけかと
すると布団の隙間から顔を覗かせてた俺の目の前に紙袋が置かれた
この匂いはハーブチキンサンド
俺が急いで手を伸ばすと紙袋は遠くに行ってしまう
あれよあれよという間に布団からひきずりだされた
「おはよ日向」
にこりっておまえ開いた口が塞がらない
「水瀬」
「さんだろ?
ってココアでいいんだっけ?」
「あっうん」
俺はキッチンを何故か知り尽くしてる水瀬に任せて先に顔を洗うことにした
身支度を終えてキッチンを見ればサンドイッチにサラダそれにいれたてのココアが並んでいた
「お座り」
「俺は犬じゃねぇ」
言われるがままに座りココアを啜る
「本当に好きだよね」
「えっ?」
「ココア」
あぁココアねココア
「ガキみたいだとか笑えよ」
「別に好きならいいんじゃない」
俺は内心ほっとしてサンドイッチにかぶりついた
「なぁおまえはうまくやってるのか?」
「人の恋路が気になるの日向?」
「別に」
「桜さんは日向が思うような人じゃないよ」
「好きにしろよ関係ない」
ふっと笑う水瀬はどこか寂し気だった
「水瀬?」
「ん?」
「タバコ吸わないなって本当にそれだけ」
黙々とサンドイッチを平らげた
「別に」
「桜さんどうしてるの?」
「やっぱり気になるんだな」
「そういうわけじゃないけど水瀬の態度いつもと違うから」
やっとタバコを取り出して吸う水瀬
少し間が空いてやっと語りだした
「桜、死んだんだよ」
「はっ?あんなに元気だったじゃんか」
なるべく冷静に言ったつもりが声が震える
「だろ?人ってわかんないんだよ」
「水瀬···?」
笑う水瀬は冗談を言ってるのだろうか
「ないんだよ、なっおかしいだろ?」
話しがわからず口が開いたままの俺
「ないって?」
「死体」
「えっ?その場に居合わせなかったの水瀬?」
「あぁたまたまな」
「掘り起こしたの?」
「墓な」
「意味わかんね」
「だろ」
「生きてるんだろ」
そこで水瀬がこらえきれずに
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