睡恋─彩國演武─
*
格子窓から、光が差す。
空が、白い。
燃え尽きた蝋燭が、受け皿の上に模様を描いている。
『どうする、今日』
月読がやけに浮かれた声で話し掛けてくる。
「何で嬉しそうなんだ……?」
『そなた、脩蛇を倒すつもりなんだろう?久しぶりに戦いが楽しめる』
「楽しめるかどうかは、使い手の力量次第でしょう」
呆れたのか、千霧は淡々と答えながら壁にもたれた。
「月魂の力は脩蛇よりも強いのか?」
『……それはそなたの技量次第』
月読の弾んだ声に、千霧は苦笑した。
暫くの間、夜明けをじっと観察していたが、鍵を回す音に扉に視線を移す。
『来た来た……』
視界の隅に衛兵の姿が映る。
「これからお前は禊(みそぎ)を行った後、神殿へ移り儀式をすることになる」
「……神殿?」
千霧の呟きにも気付かず、目の据わった衛兵は説明を続ける。
「禊は、春牧様と二人で執り行うのだ」
「春牧と……!?」
言うまでもなく牢の外に出され、引き摺られるようにして別室へ移動させられる。
石造りの広い部屋の中央に、妖しく輝きを放つ泉がある。
泉の前には、繻(うすぎぬ)を着ているだけの春牧が立っていた。
千霧は自分よりも大きな女を見上げてしまう。