睡恋─彩國演武─


「私も、空良と約束したんだ」


「──え?」


「由良を、幸せにするって」


ふわりと風が頬を掠め、千霧が笑う。

由良も、つられて微笑んだ。


「由良、辛い旅になりますよ?」


「俺、頑張ります。玄武の力を、お二人の為に使いたい。それに……」


「それに?」


「白樹の王子を捜したいんです。王の心が休まり、祖父の愛した白樹が、もとの美しい国に戻るように」


何年かかるかなんて分からない。

けれど、いつか。

この国に緑が戻った頃、空良とまた会えますように。






「……そうですか。貴方らしい答えですね」


「俺らしい、ですか?」


由良は、きょとんとした目で首を傾げる。


「呉羽は、由良は優しいって言いたいんだよ」


「優しい……?」


「うん」


頬を染めて、彼は照れたように笑った。


その声に、気絶していた王が目を覚ました。



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