睡恋─彩國演武─
「──白王様、千霧様は生まれつきお身体が弱いので皇にはなれないのですよ」
「あぁ、だから皇は──」
千霧が答える前に、呉羽が答え、白王も納得している。
呉羽を見上げると、彼はまた髪をかき上げて目をそらした。
「──よほど千霧様を大切になさっているのですね」
「え!?」
「私も──もし息子が病弱なら、皇と同じことをしました。王子という立場は、時に辛いものになりますから」
淋しそうな白王の表情が、父と重なる。
千霧は思わず口を押さえ、込み上げてくる想いを抑えつけた。
「今は戻ってさえ来ない」
白王は、きっと。
他からは理解など到底できないほど、辛いのだ。
だからこそ、その心は脩蛇に寄生され、利用されてしまった。
……王子が帰らなければ、彼の痛みは永遠に続き、そして、今回のような悲劇が再び繰り返される。
「──王子が居なくなった理由を、訊かせてはいただけますか?」
「それは──」
最初、白王は言い渋っていたが、決心するとついに語り始めた。