睡恋─彩國演武─
呉羽の意見に賛同するように、千霧も頷いた。
「どうしてですか?」
純粋に疑問をぶつける由良に、千霧はチラリと白王を見た後、口を開いた。
「……各国の王や国民と、異形に知られなくないからだよ」
「……我々に……?」
「──世間的には、私は存在しないはずの第二皇子。彩國に大きな混乱と、朱陽の皇への不信感を抱かせる原因になりかねないからね」
「あっ……」
やっと呉羽の言った意味が解り、そして千霧にそこまで言わせてしまったことに申し訳なさを感じ、由良は言葉を失う。
「白王、あんなに強力な負の塊である異形を見たら、今の彩國の状況は言わずとも分かりますね?」
「──はい、およその事は、想像できます」
「ならば、この話は内密に──…」
「承知しました。……ですがなぜ、皇は皇子を隠されたのですか……?貴方のような立派な皇子なら、なおさら──」
白王の言葉が、胸に突き刺さるようで、千霧は自然と唇を噛んでいた。
いつものように、頭の中で言い訳を考える。
もう何度、人に嘘を吐いただろう。
これで、何度目なのだろう。
そんなことを、ぼんやりと思いながら。