睡恋─彩國演武─

由良は軽くお辞儀をし、そのまま部屋を出た。

しかし、不慣れな場所で道もよくわからない。

迷ったあげく、店番をしていた少年に訊くことにした。


「あ、あの、水をいただけますか?」


思い切って話し掛けると、まるで少女のような少年はにこっと笑った。


「アイ姐さんのお客様?」


声まで本当の娘のようで、由良の心臓は跳ね上がった。

何も答えない由良に、少年は思い出したように声を張った。


「いけない!お客じゃなくて、お友達でしたよね?」


「あ……はい」


少年は柔らかそうな唇を左右に広げて微笑んだ。


「ごめんなさい。すぐ忘れちゃうみたいで。お水ですよね、すぐ用意します」


頬を染めて恥じらっている姿は、桃の花のよう。

少年は桶を受け取ると、瓶に貯めてあった水を柄杓(ひしゃく)ですくった。


「……あの、変なことを訊いても良いですか?」


「はい。構いません」


由良はスゥっと息を吸うと、思いきってみる。


「男……ですよね?」


少年はくるりと振り向いて、水の張られた桶を由良に手渡しながら口にした。


「もちろん。ここでは、姐さんを除いたら男ばかりですよ」


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