睡恋─彩國演武─
声は格段に低くなり、腰まであったはずの髪も短くなっている。
顔つきはほぼ変わらないが、微妙にそれまでのアイとは違う。
一瞬にして、纏う雰囲気が変わったのだ。
「龍脈、戻ったじゃん。良かったね」
戦い終わって上機嫌なアイは、弾むような声で無邪気に笑っていた。
だが呉羽が浮かない顔をしていると、笑うのをぴたりとやめる。
「……納得いかないって顔だね呉羽。いいよ、教えてあげる」
さも面倒くさそうに、彼は眉間に皺を寄せ、射るような視線で呉羽を貫いた。
「僕は、先代の消滅後に転生したんだ」
『転生』とは、本来、輪廻により生まれ変わることを意味するが、四聖にとっては事情が別だ。
彼らは、自らが消滅するまでに、一度だけ人間として生まれ変わり、四聖の力を封印することができる。
それが、『転生』。
転生している間は、四聖の頃の記憶を失い、全く別の人格となる。
──しかし、転生とは『四聖』という役割を放棄するものではないため、転生中も魂の中に四聖の頃の力を秘めている。
それらは彩國の変動や五行の乱れ、また龍の意思により目覚めるのだ。
「たまにね、想定外に目覚めることがあるんだよ」