睡恋─彩國演武─
アイは長く赤い爪を噛みながら、不快そうに視線をそらす。
「転生中に思い出しちゃったんだ、全部。──そしたら、人間じゃなくなった。やっと掴んだ幸せも粉々だよ。アンタも知ってるだろ?転生中の掟」
「自ら過去を思い出せば、いかなる事情でも四聖に戻る……ですか」
「そうそう。先代は僕らにそう教えたよね。──でも、実際違うんだよ。本当は、人と四聖が混ざって中途半端な出来損ないになるのさ」
アイは自らが穢らわしい生き物だと言うように身震いした。
そして鋭い眼光を呉羽に向けると、取り乱したように声をあげる。
「アンタはいいなぁ……龍に飼い慣らされて、運命に従うのは楽だろう?」
「何を──」
「くく……あははははっ!」
呉羽が言い切る前に、アイは狂気的な笑い声を上げながら水面を覗き込んだ。
「僕って醜いね……」
水面に映る、絶望の色。
「運命なんか見えてなかったら、僕は幸せになれたのかなぁ……」
「アイ……?」
ひとつの波紋に、彼の顔が歪む。
引き絞るような声は、また別人のようだった。