睡恋─彩國演武─
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「……きっと幸せだよね。アンタも龍も、見てて腹が立つくらい幸せ面してるし」
アイはフッとため息をついた後、口元を歪めた。
「帰ろ。なんか疲れた」
気だるそうに立ち上がると、呉羽をじっと見つめる。
「早く。僕、疲れたんだってば」
「つまり、帰りは乗せろと……?」
「そうだよ。文句あるの?」
僕の言うことは絶対、といわんばかりの笑みで答えるアイに、呉羽は渋々、白虎に戻る。
するとアイは上機嫌になって飛び乗った。
(やれやれ、我が儘は昔から変わってませんね……)
予想以上にアイの体は軽く、人が一人背中に乗っている感触がまるでしない。
呉羽が驚いていると、勘の良いアイはにやりと口角を吊り上げる。
「──出来損ない」
彼の無機質で、やけに冷静な声は呉羽の鼓膜へ沈んでいった。