睡恋─彩國演武─
*
「あの、千霧様。何かあったんですか?変ですよ、さっきから」
困り果てた由良が眉を寄せて、首をかしげた。
千霧があまり多くを語らないのはいつもの事だが、今回は明らかに様子が違う。
思い詰めたような表情をしているし、時折、遠い目をするから。
「何もないよ。私、考え事してると、いつもこんなふうだから」
千霧はあわてて取り繕った。
由良を困らせるようなことは、言わない方がいい。
自分の事は、自分でどうにかしなければ。
「だから──」
「嘘ですよね」
気にしないで、と言うつもりだった。
それなのに遮られ、千霧は驚いて目を見開いた。
「貴方と一緒に居て気付いたんです。何か、上手く言えないけど、無理してるっていうのかな……。色々、我慢してませんか?」
普段はあまり関心の無いようでいる由良が突然放ったその言葉に、千霧は衝撃を受けた。
「俺が力になれる事なんて限られてるから、──できれば、些細なことでも協力したいんです」
由良はまっすぐな瞳で千霧を見て、それから一呼吸おいて口を開いた。
「俺は別に、千霧様が龍だからとか、俺が玄武だからとか、そんな理由でついてきた訳じゃないんです。ただ、貴方の人柄に惹かれたんですよ」