睡恋─彩國演武─

藍は、己の中に力が満ちるのを感じた。

転生の呪縛から放たれた朱雀の力が、満ちてゆく。


「アイ!僕の力が──」


アイを見たとき、彼女の姿に言葉を失った。

半透明の身体と、美しさを増した笑顔。


「良かった。藍に力が戻って、本当に嬉しい」


「な……んで……」


「アタシは藍の不安定な心から生まれた歪み。力が戻ったら、消えるのが道理よ。──貴方に戻るの」


「違うよ……消えるのと戻るのは違う。今まではアイを傍で感じてこれた。それが無くなったら僕は──」


アイは人差し指を藍の唇に当て、言葉を遮った。


「アタシは、藍だもの。藍が生きる限り、アタシも傍に居る。大丈夫、怖がらないで」


アイはそのまま、藍を抱き締めた。

しだいに見えなくなっていくアイを、藍も引き留めるように抱き返す。


「ありがとう」


藍の素直な言葉に、アイは一瞬驚いたように目を丸くした後、かすかに微笑んだ。

それを最後に、彼女は完全に藍の前から姿を消してしまった。


< 222 / 332 >

この作品をシェア

pagetop