睡恋─彩國演武─

しばらく呆然と立ち尽くしていた藍だったが、やがて顔をごしごしと擦ると力強い眼差しを千霧に向けた。

「僕はもう出来損ないじゃなくなった」

「うん」

「四聖の禁は解かれた。──だから今は龍のもとへ戻る資格がある」


藍は岸へ上がり、本来の獣の姿へと戻る。


「──朱雀の藍、御心をもって龍の御身にお仕え致します」


誇り高き朱雀の姿。


この決意が、彼の運命を変える最初の一歩なのだと千霧は悟る。


そして、彼の運命の始まりなのだと。


「私も藍との約束、ちゃんと守るから」


「うん。信じるよ、君のこと」


瞬間、藍の姿が人へ戻り、彼は充血してしまった目を見られたくないのか、ぷいっとそっぽを向いた。

拗ねた子供のような態度が可愛く思えて、思わず笑ってしまう。


「……ちょっと何笑ってるのさ!?」


「ごめんなさ……ふふっ」


堪えたくても笑いが止まらない。


「あっ!アンタまで笑うなよ!」


隣で笑いを堪える呉羽に気付いて、藍が不機嫌な顔をする。


「すみません……可笑しくて。藍、私と同い年ですよね」

「だから何?」

「いや、若いなぁと思って」


「莫迦にしてんの?そういう嫌味が得意なとこは変わんないよね」


< 223 / 332 >

この作品をシェア

pagetop