睡恋─彩國演武─
しばらく呆然と立ち尽くしていた藍だったが、やがて顔をごしごしと擦ると力強い眼差しを千霧に向けた。
「僕はもう出来損ないじゃなくなった」
「うん」
「四聖の禁は解かれた。──だから今は龍のもとへ戻る資格がある」
藍は岸へ上がり、本来の獣の姿へと戻る。
「──朱雀の藍、御心をもって龍の御身にお仕え致します」
誇り高き朱雀の姿。
この決意が、彼の運命を変える最初の一歩なのだと千霧は悟る。
そして、彼の運命の始まりなのだと。
「私も藍との約束、ちゃんと守るから」
「うん。信じるよ、君のこと」
瞬間、藍の姿が人へ戻り、彼は充血してしまった目を見られたくないのか、ぷいっとそっぽを向いた。
拗ねた子供のような態度が可愛く思えて、思わず笑ってしまう。
「……ちょっと何笑ってるのさ!?」
「ごめんなさ……ふふっ」
堪えたくても笑いが止まらない。
「あっ!アンタまで笑うなよ!」
隣で笑いを堪える呉羽に気付いて、藍が不機嫌な顔をする。
「すみません……可笑しくて。藍、私と同い年ですよね」
「だから何?」
「いや、若いなぁと思って」
「莫迦にしてんの?そういう嫌味が得意なとこは変わんないよね」