睡恋─彩國演武─
彼もまた、未来というものに期待していた。
未来を予知する力はあるが、先の運命全てを知ることはない。
ふとした拍子に、脳内に映像や声が流れ込んでくるだけだ。
故に、その出来事がいつ起こるのかなどは一切わからない。
だからあの時も、母の死を回避することは出来なかった。
だが今度なら。
“導く者”が居るなら、何か変わるかもしれない、と。
「二人とも、早く〜!」
数歩離れた場所で、千霧が手を振っていた。
「あ、ま、待ってください!」
由良が駆け出すと、その背を追うように、藍も千霧の元へと駆けた。
「──では千霧様、私は由良と地上を行くので、また後で」
「ええ。宜しくね、呉羽」
白虎戻った呉羽に呼び掛けると、千霧は朱雀の背に飛び乗った。
由良が高所を嫌うのを配慮した結果、廓まで二手に別れて帰る事になったのだ。
「──じゃ、また後で」
面倒くさいと言わんばかりに呟くと、藍は千霧を乗せて空へ羽ばたいた。