睡恋─彩國演武─
「そうだね。俺ってば、もう納得したはずだったのに、空良の顔見たら急に……行くよ。約束……したから」
「うん」
空良は微笑んで、大きく頷いた。
「またね」
その言葉を区切りに、由良は彼に背を向け、岸へと向かった。
振り返ったら、きっとまた歩みを止めてしまうだろうから。
「また……ね」
前を見つめる。
今進むべき道と、仲間の居る方向を。
「ほら、滑るから」
藍は由良の背丈と光泉の深さを配慮し、手を差し伸べた。
「あ……」
遠慮がちに掴まると、そこから一気にぐいっと引き上げられ、その細い腕のどこにそんな力があるのだろうかと、つい考えてしまいそうになる。
「気は満ちた?」
藍の問いを不思議に思い首を捻ると、先程よりも身体が軽いことに気付いた。
「王子が俺を泉に引き込んだのって……気を戻すためですか?」
「ご名答。勘がいいね」
声を弾ませながら、ニッと口角をつり上げる。
そして元気を出せというように由良の背中を軽く押し出した。
「過去を悔いても何も変わらない。だったら、未来を信じなよ」
見上げた藍の横顔は、由良とは何処か別の場所を見ているようだった。